少女邂逅

 枝優花監督の少女邂逅。私には少々期待外れだった。
 邂逅・・・蚕!?そんな驚きから始まり、感情の描写が続いてちょっと耐えられないなあと感じたところでいきなりファンタジックなプロットに転移するバランス感は悪くない。

 そして、確かに中盤の1度の長回しは若干心惹かれたことは否めない。

 けども、まあ取り立てて騒ぐところはないかなあ。

 タンクトップみたいのを着ているのはファンタジーの中においては大人の事情色が強すぎて違和感あったなあ。

少女邂逅 DVD

少女邂逅 DVD

恵比寿映像祭

 恵比寿映像祭と提携ギャラリーをいくつか。
 最も印象に残ったのは、日仏会館で展示されていた三宅唱(とYCAMの共同)のワールドツアー。主にiPhoneにグリップをつけて撮影したTikTokばりに短い動画を、編集構成したもの。これが、ずっと観ていられる。まさに、波打ち際で波の行き来を見ているように、河川敷にしゃがんで川の流れを見ているように、ずっと観ていられる。
 岡田裕子の作品はグッとこなかったな。個人的に、ああいった造形に普段から親しんでいるからだろうか。
www.yebizo.com

すいか

 Huluで。なんでこの内容で土曜9時の枠の数字が取れると思ったのか。素晴らしく面白かったけど、視聴者層間違えちゃった、みたいな結果かと。
 このドラマの主題として、私が最も強く感じ取ったのは、女性の自立。娘の母からの自立でもあり、母の娘からの自立でもある。女性の結婚からの独立性であったり。
 小泉今日子浅丘ルリ子の存在感のすばらしさ。
 ハピネス三茶の1/2階を穿った穴の意味は何なんだろう。埋められて、物語は終わったわけだけど。

 全然話が違うけど、カーネーションの再放送を観た後で、まんぷくは余りにも時代の空気にミスマッチなんだよな。福子の在り方が。

すいか DVD-BOX (4枚組)

すいか DVD-BOX (4枚組)

2018国際平和のための世界経済人会議 セッション4

 例の。セッション4:アートによる社会への働きかけを通じた平和の実現

  • 林 千晶 株式会社ロフトワーク 代表取締役
  • 宇野 常寛 評論家 PLANETS編集長
  • 桑原 滝弥 詩人
  • 関根 健次 ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役 一般社団法人 国際平和映像祭 代表理事 ピースデー・ジャパン共同代表
  • 谷崎 テトラ 作家、音楽プロデューサー 京都造形芸術大学教授


2018国際平和のための世界経済人会議 セッション4

 そして、宇野が話題に挙げた、坂口安吾の「戦争と一人の女」(内容からいうと、この“続”の方だろう)
www.aozora.gr.jp

パラランドスケープ “風景”をめぐる想像力の現在

 三重県立美術館にて。
 まずはエントランスホールの伊藤千帆による作品は、私にとってはエロスであった(配布された作品解説にも書かれている通り)。皮を剥ぎ磨き上げられた木の肌は滑らかで、撫でたい欲求が自分のうちに湧き上がるのを感じた。太さこそ違うが、実家の床の間に、皮を剥ぎ磨き上げられた柱があったのを思い出した。光の反射が強くもあり、鈍くもあり、繊細でもあり、様々な表情をのぞかせ、強く私の心を惹きつけた。ラテックスカーテンは経時変化を楽しむもののようで、今回はフーン以上の感想はない。
 1つ目の部屋、尾野訓大による写真展示は、見てすぐにミニチュア的だと感じた。言語化できないのだけど、なぜ気づくのだろうか。そして、何よりも私の心を躍らせたのは、そのサイズであった。3つ(だったかな?)A0を超える巨大プリントがあり、その制作過程にも思いを巡らせる。惜しむらくは作品が弛んで、印画紙のもとの巻きが残っていたことで、真っすぐに張り詰められて壁と一体化していたら、もっと「ぐっと」きたのではないかと思った。
 2つ目の部屋、稲垣美侑のインスタレーションは個人的には訴えてこなかった。この作品を見て、真っ先に思い浮かべたのは昨年水戸芸で催された内藤礼の個展だったのだけど、それは思い浮かべただけであり、水戸芸で最後の小部屋の明かりに感動して心震わせられたあの現象は、今回は特に何もなかったのだった。
 3つ目の部屋、徳重道朗による南伊勢町から紀伊長島にかけてのインスタレーションは、個人的には不満であった。何度か伊勢現代美術館を訪れたことがあり、また、伊勢路を何度かに分けて、梅ケ谷駅から新宮まで歩いたことがある人間としては、このインスタレーションによって、彼の地の記憶は多少は呼び戻されるものの、南伊勢や紀伊長島の路地についていえば潮の匂いがしないことに違和感を持つし、古道の峠道についていえば森の匂いがしないことや虫のけたたましさが感じられないことに違和感を持つ。一方で彼の地を訪れたことのない人にとっては、土地の課題が典型的な課題としてしか映らないのではないだろうか。印象としては、紀伊長島含め三重側南紀の過疎化の問題はもっと苛烈である。
 4つ目の部屋、藤原康博によるペイントを主とした展示を見て考えさせられたのは、この、プリンタで再現性高く高精細なプリントが得られる時代にわざわざ手で描く精密画の意味だった。木の板に描きつけた山並みは陰影も美しく、素晴らしいという第一印象だったが、2019年においては先に書いた疑問が浮かぶのであった。そして、どうでもいいことだが、なんでビーズなのに接着剤で制作しているのかなというつまらないツッコミが思い浮かんだ。
www.bunka.pref.mie.lg.jp

あん

 河瀬直美監督の「あん」。プライムビデオで。またしばらくは河瀬直美を観なくていいという自信がついた。
 演出は控え目、作家性の誇示も控え目、ドリ助の原作を読んでみようかなと思える位の出来で、むしろ「あんこ」の画が魅力的でこれは東京五輪記録映画の監督は正解なのかと思って見ていた。見ていた。
 前言撤回、原作*1にあるのであろう教育的なストーリーに移ると前言撤回。手持ちカメラが気になるのが限度を超え、人物描写(特に甥っ子)の貧弱さに我慢がならなくなったところでゲームオーバー。
 最初っから手持ちカメラは気にはなっていた。カメラがよく動くことで、物語世界に集中できない。手持ちカメラで撮影することで、観客は誰の視点なのか考えさせられてしまうことを、監督は知っているのだろうか?河瀬直美は、採用するカメラワークに論理を持っているのだろうか?
 30fps?の連続写真なのかな。彼女の撮ったものは。
また5年から10年は彼女の撮ったものを観なくても大丈夫そうだ。

あん

あん

*1:第25回読書感想画中央コンクールの指定図書(中学校・高等学校の部)