不安の世紀から

 一読に値する辛辣な本だった。著者、辺見庸自身が「メディア」内部の人間であるが、自らを含む「メディア」の罪(sin)を深くえぐることを陰の目的に持っている本だった。
 著者は「今」に危機感を持っている。
 これはすぐれた想像力からきている。
 村上龍の文章を思い出した。なぜなら彼の文章にも同じような、読者に危機感を持つことを促すようなメッセージがふんだんに散りばめられているからだ。昔は。
 俺自身も考えることが多々あった。
 僕らは皆、生きていることに鈍感になってしまっている。海の向こう側で、あるいはこの国の僕らの目につかないところで、たくさんの人が無差別に殺されたり、日本が借金まみれになっていたり、、、そんなことに無関心なのだ。僕らが興味があるのは「今」何が楽しいか、なのだ。
 もちろん僕自身もこういう本を読んでいないとき、読んでしばらく経ったとき、など忘れてしまう。僕らは常に想像力をフルに発揮させ、戦って行かなければならないのだ。
 それができていない僕らは痛みを感じるべきなのだ。
 罪深い僕らは。

不安の世紀から (角川文庫)

不安の世紀から (角川文庫)