オリンピック

 今までまったく触れてこなかったが、アテネではオリンピックが行われている。俺はスポーツのプロ化が疎ましく(俺の気持ちを正確に言えてないかも知れない)、あんまり触れる気がしなかった。
 が、やはりトップアスリート達は、すごい。この「すごい」という3文字で表現するのが失礼だと思えるほどすごい。
 室伏広治がかっこよかった。
 もてるものをすべて賭け、勝負した者だけが語っていい言葉、一言一言に、何年間か分からないが、年月が詰まっていた。重かった。敗者の美学がすべてそこにあった。俺は負けたんだ!!!言い訳はしない、というような強い決意(多分無意識ではあるだろうが)が彼の周りに漂っていた。まさに発散していた。しかし彼は淡々としていた。満足はしていないだろうが、納得していた。これは自分に最大限ストイックになれたからこそ、だと思う。美しかった。
 加えて彼は、最後の投てきを残して、1位の選手に差をつけられていて、とんでもない、俺の想像力の届かないくらいのプレッシャーがかかる中、最後に、第6投目に1位の選手にあとわずかまで迫る記録を残している。精神力のつよさを示している。意図せずして胸が痛くなった。かっこいいと思った。
 野口みずきがかっこよかった。
 彼女が言った一言「死ぬ気でがんばりました」これがすべてを象徴していると思った。これは室伏同様、最大限ストイックになれた人間だけが言える言葉だ。俺には言えない、恥ずかしくて。がんばりますは誰が言ってもかまわない。でも、がんばりましたはバックに最大級の努力がなければ語れない。それがなくてものうのうと言うようなやつは俺は許さない。彼女も1億人の期待を背負い、それにつぶされることなくむしろ力に変え、金メダルというものに結晶化した。かっこよすぎて表現する言葉がない。