1996年当時、尊師麻原彰晃の逮捕後のオウム真理教。広報部長の荒木浩を追ったドキュメンタリー映画である。メディアを中心とするオウムへの迫害の中で、警察による信者の不当逮捕という事件を境に森自身が映像に積極的に出演していく。これは元々TVのドキュメンタリー番組として撮影がスタートしたのだが、オウムを絶対悪とするような視点を押し付けられたため企画が中止になり、自分で撮り始め、森は会社を首になってしまった。その後のシンポジウムで森自身とプロデューサー安岡卓治が言っていたことだが、森は最初は興味がなかったらしい。オウムの人々と接していて徐々に興味がわき、また、プロデューサーとして安岡を迎えた最初の撮影日に起こった不当逮捕を境にのめりこんでいく。この事件で撮影したビデオテープが不当性を示す証拠なのであるが、ここで森の葛藤がある。ビデオを出さなければオウムとの関係は切れるだろうし、出せば世間から叩かれるかもしれない。ここで彼はビデオを出し、そして自らも積極的に被写体となることを決意する。誰が見てもここがこの作品のヤマである。
 森が言っていたが、ドキュメンタリーは多かれ少なかれセルフドキュメンタリーである。つまり主観を完全に排除したドキュメンタリーなんて存在しないということだ。それに無自覚な人間が多い。それは罪なことだと思う。
 想像力の問題なのだ。

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