アゴタ・クリストフの悪童日記を読んだ。この文章はジュール・ルナールのにんじんそっくりの文章で、たくさんの小話の集合によって成り立っている。
戦争により疎開しておばあさんの下に預けられた双子の「ぼくら」を語り手とするというか、2人の日記という形式をとった小説で、2人の視点から見た「日常」を全くと言っていいほどレトリックを退けた文章で描いている。この文章にはルールがあり、作品中で2人が語っている通り、真実のみを書いている。感情を含むような言葉は極力避け、主観を徹底的に排除しようと試みている。文体については書きたいことや引用して説明したい部分がたくさんあるのだが、この本の解説とかぶっていて、そこに詳しいので省く。
上記の文体で描かれるのは、戦争下という極限状態での死、強姦、餓え、差別…etc…の重い出来事だ。ただそこには上記の通り2人の感情は徹底的に省こうと努力される。それがかえって悲惨さを強調する。もう正直読んでいて、ただただ悲しくなる。
最初の方で書かれる修行と称される行為(体を鍛える、精神を鍛える、乞食の練習、盲と聾の練習…etc…)は僕にとって読むに耐えない(こんな言葉はあるのか?)部分だった。ここに書かれた修行は虐待を受けた人間が自分の中にもう1人人格をつくってやることで(精神医学に詳しくないので間違ってるかも知れないが)、それをただ双子でやっているのだ。この2人が一心同体みたいな書かれ方をしていることを鑑みても、2人は確実に病んでいる。読んでいて本当に苦しくなる部分だった。
読んでいて決して心地よい作品では無い(ところどころに挿入されるブラックユーモアがおもしろいところはあるが)。でも、目を背けてはいけない小説だ。もし、大人にも読書感想文の宿題があったなら、課題図書に最適なのではないだろうか。絶対に読むべき本だと思った。原田宗典が何かの本で推薦していたのがうなずける良書だ。この本については語るところがたくさんあるが、うっとうしいし、ひとまず終わりにしよう。
- 作者: アゴタクリストフ,Agota Kristof,堀茂樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/05
- メディア: 文庫
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