太宰のきりぎりすを読んだ。
以前角川の女生徒で読んだ短編が4つ含まれているのでそれについては割愛。もっとも印象に残ったのは畜犬談という短編で、これは「私は、犬に就いては自信がある。いつの日か、必ず喰いつかれるであろうという自信である。」という書き出しで始まる、主人公である男が、大の犬嫌いであるにも関わらず、犬のご機嫌をとったり、犬を救ってしまったり…という、ユーモアのある小説である。文章を畳み掛けるようにして、犬が嫌いだと宣言しているのに、小説の最後で主人公に「芸術家は、もともと弱い者の味方だった筈なんだ」と言わせるところが、太宰の自省を垣間見せていて、いいなと思った。
その他の短編も、登場人物に太宰自身が投影されていて、深い自省が見て取れる。
自殺未遂を扱った"姥捨"も含めてなんか人間くさい感じで悪くない。
- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1974/10/02
- メディア: 文庫
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