新潮文庫のつげ義春の義男の青春・別離を読んだ。
なんか独特のアクの強い漫画で、私小説的な(解説の近藤ようこによる)作品や、妄想の世界を描いたもの、一つのエピソードをそのまま作品にしてしまったものなどがあったが、全部ブラックな雰囲気を持っている。ネタ漫画にしても、必殺するめ固めとかいってその技をかけられた相手がするめみたいにくるくる巻かれてしまうという、すごくくだんねえ感じなのに、絵がじめじめしていて、素直に笑えない。さすがガロだなと思いつつ読んだ。
収められてる義男の青春で、つげの分身と考えられる義男が先輩漫画家に
「漫画なんて他のジャンルと違って消耗品だからね。ダメになったときの支えも考えておかんと」と言われて、
「でも芸術的な漫画がでてくれば」と答えている。読んでみて思ったのは、彼の作品は十分すぎるほどに芸術的だ。平気で夢と現実が交錯したりする。非現実的なことが簡単に起こり、しかも説明してくれない。解釈は読者にお任せしますということだろう。
あまりエロスを感じないエロス描写とか、やたら影のある人間像とか、つげはこの絵しか描けなかったのだろうか?それとも自ら進んでこの絵を描いたのだろうか?
- 作者: つげ義春
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1998/07
- メディア: 文庫
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