グッド・バイ

 太宰のグッド・バイを読んだ。得意の私小説あり、戯曲あり、女性の独白体ものありの短編集で、太宰らしい味のある短編が結構ある。
 中でも、表題作グッド・バイが一番気に入った。この作品は、太宰の死の直前に途中まで書かれた未完の小説であるのだが、未完であっても、抜群に面白いと思う。作家太宰治のエンターテイメント性が遺憾なく発揮されている。
 たくさんの愛人を持つ闇屋の男が、一念発起して全ての愛人と手を切ろうとする。そこで、闇屋仲間で普段は小汚く(小は余計かも)怪力で声も汚いが、実は絶世の美女である女に助けてもらうというストーリーで、その女の気味のいいこといいこと。軽いテンポで明るい笑いがあり、この作品、は2人目の女と別れる算段をつけるところで途切れてしまっているのだが、続きが読みたい。そう言わせるだけの魅力がある。
 この作品の途切れ方を考えるとなんだか切なくなる。

グッド・バイ (新潮文庫)

グッド・バイ (新潮文庫)