SWEET SIXTEEN

 ケン・ローチ監督のSWEET SIXTEENを見た。ダンサー・イン・ザ・ダークを見たとき以来の気持ちになった。この映画には救いがない。巷にありふれている物語にあるような、救いや、その後の道すじといったものが、ない。言葉でうまく言えないけどそういう意味でごまかしの無いリアリティがあるように感じた。何か心に残るものがあった。
 この映画は悲しすぎる。主人公リアムは母への愛情から、麻薬の密売に関わり、友達を(結果的に)裏切ってしまう。家を借り、母親が出所し、姉と母の仲直りも済み、さあこれからだという主人公の希望がものの見事に崩れ去る。何もない。しかもその、幸せが崩れ去った日は、彼の16歳の誕生日なのだ。彼が求めたのは、ただ、母と姉と姉の娘の4人での普通の暮らしだけなのに。。。確かに彼はおちこぼれだし、麻薬の売買に関わるという、悪い結末を呼んで当然のことをしているのだ、あらすじだけを読むのならば。でも、この映画を見ているとそんな気持ちはみじんもわいてこない。なぜ彼がこんな運命になるんだと打ちひしがれる。なぜなら彼は彼の中でのモラルをしっかり持っているからだ。彼の中で、悪いことだと分かっていて、リスクとリターンとを天秤にかけて、それで悪いことをしているからだ。彼は正しくはない。ただし、もちろん、間違ってもいないと思うのだ。
 これがスコットランドのブルーカラーたちの現実なんだろうか?自分を振り返って、自分の甘えが身につまされる。スコットランドの風景とのギャップが痛々しい。
 ゴーストワールドといい、この映画といい、最近「いい」映画を見ている気がする。

SWEET SIXTEEN [DVD]

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