陰の季節

 横山秀夫の陰の季節を読んだ。いわゆる警察小説(そんなジャンルがあるのかは知らない)というものらしく、D県警の中の事件に絡ませた人間ドラマが描かれる。
 一読して分かるのは、ディテールがよく書き込まれているなということだ。事件という物語の枠組みはもちろんしっかりしていて、その中を埋める人間の心理の書き方がすごくこなれている。組織の中の、板ばさみの男の心理が本当に丁寧に描かれているのだ。一言で言えば完成度が高いということだろうか。映画半落ちでも心理の描写が優れていると思ったが、あれは原作の力なのだろうか?読んでないからわかんないけど。
 最後のオチというか「結」の部分というか、がもうちょっと丁寧に書いて欲しかった感はあるけど。???ってなって何回か読み直したし。でも松本清張賞選考委員の激賞はうなずける。

陰の季節 (文春文庫)

陰の季節 (文春文庫)