坊っちゃん

 言わずと知れた夏目漱石坊っちゃんを読んだ。予想に反してかなり面白かった。
 旧制中学を舞台としているが、それは人間社会全体の縮図としてであり、そのなかで坊っちゃんが(坊っちゃんの信ずるところの)強烈なモラリストとして、(坊っちゃんの信ずるところの)悪である赤シャツと野だをこらしめるという、コミカルな社会批判的な一面を持っていると思う。
 リアリティがないだの、寓話に過ぎないだの言うものの、やっぱり心のどこかで世界が勧善懲悪であって欲しいという、本能的な感情を満たしてくれる。
 江藤淳の解説を読めば、もう一段深く読むことができ、さらに坊っちゃんを楽しむことができる。なるほど、100年も生き残る理由のわかる小説だった。

坊っちゃん (新潮文庫)

坊っちゃん (新潮文庫)