高知県立美術館

 高知県立美術館に行った。ここはやたらとシャガールの絵を持っているらしく、たぶん人生で初めてくらいたくさんのシャガールを見ることができた。さらに、企画展として山本昇雲という高知出身の画家の作品と、去年この美術館が新たに所蔵した作品を展示していた。
 シャガールの絵にはシャガールの内面が色濃く反映されている。そして、描線が太くてやわらかい。もはや線ではなく面であるといいたいくらいに。加えてやわらかな曲線へのこだわりを感じる。色彩感覚については語るまでもない。
 山本昇雲という日本画家の作品はかなり完成度が高かった。もう、12、3歳の頃のスケッチブックの絵からしてうま過ぎでした。彼の絵は、シャガールと好対照と言いたくなるほど描線が細く、細かな線の集合で描かれている。日本画、水墨画のルールに則って描かれている味を感じる絵なのだが、個人的に、美人画は顔がみんな同じに見えてしまい気持ち悪い。そういうもんだと言われればそうなのかも知れないが…。美人画以外の絵は何かしら躍動感やユーモアを感じていいなと思った。特に「子供あそび」シリーズってのが、レトロ(百年前の絵にレトロってのもおかしな言葉遣いだが…)で、微笑ましく生き生きとしていた。
 去年新たに所蔵した作品の展示では、岡上淑子という、これまた高知出身の人のコラージュ作品が印象に残った。もうセンスがいいとしか言いようのない、抜群な作品があった。たぶんに示唆的なものもあり、コラージュという表現方法に対する僕の考え方を変えるのに十分足る作品だった。これまでコラージュはお遊び程度だとしか思ってなかった。
 そして、この美術館、ただの金網の扉を切り目をいれてゴーストに模していたり、休憩室が真っ青な部屋だったりと、そういう意匠の凝らしかたが好きだ。