スズキさんの休息と遍歴

 矢作俊彦のスズキさんの休息と遍歴を読んだ。いまやフツウの社会人と化している、学生運動世代、団塊の世代のスズキさんが、東京からサロベツ原野まで、息子のケンタ君とシトロエン2CVに乗って、「過去」を捜しに行くロードムービーならぬロード小説、現代版ドン・キホーテである。
 ものが2つ目の前に並んでいたら、間違いなく左のモノを取るであろう、真っ赤っか(この文庫本の表紙も真っ赤)で、ダイヤモンドといい勝負の頭の固さを誇る、スズキさんがイデオロギー、内なる正義でもって、旅の途中で出会う過ち(彼の価値基準で)を正していく。彼の敵は唯一つ、権力だけである。全ての「悪」がスズキさんの中で権力と結び付けられ、否定されていくさまは、滑稽であり、ドン・キホーテそのものだ(ってドン・キホーテをちゃんと読んだこと無いけど)。警察官は言うまでも無く、制服を着ているだけで嫌悪感をあらわにし、法律よりもマナーを守れと言い放つ。ルールだからという言い訳には耳を貸さない。(凝ったフォントも既存の規範への挑戦??)内なる正義を信じて疑わないスズキさんは見ていて(読んでいて?)気持ちよく、ただ、外野から見れば面白い。ドン・キホーテを読み込んでいれば、もっと面白く読めるだろう。久しぶりに400ページを一気に読めたし。矢作自身が入れてる挿絵もいい。
 ただ、白河と郡山を間違えるなんて東北地方への侮辱ですよ。わざと?