聖なる嘘つき〜その名はジェイコブ〜

 ロビン・ウィリアムズ主演のこの映画を見た。結論から言えば物足りない。
 ストーリーがいい、出演者たちの演技もいい、実に感動的で涙を誘うようなすばらしい映画だ、なんて死んでも言ってやらない、こういう映画には。この映画と設定されている時代背景が同じである戦場のピアニストとは僕の中では天と地ほどの差がある。その違いは何か?ドイツ人の描き方である。この聖なる…の中ではドイツ人、ナチスは絶対的悪として描かれている。戦場のピアニストでは主人公の命を救うドイツ人が出てくる。絶対悪として描いてしまえば簡単だろう。しかし、ドイツ人という存在が薄っぺらいものになる。相対的な視点が皆無になってしまう。こんなことは作品にとって細部でしかなく、たぶん世の中の多数の人は気にしないだろう。でも、僕はこういうディテールがすごく引っかかった。僕はユダヤ人の自己の美化なんてのには全く興味がない。民族主義は自分の脳みその中でどうぞと言っておきたい。
 この作品を通して、ロマン・ポランスキーの視野の広さがわかった。個人的な、勝手なお話ですが。