シルエット

 島本理生のシルエットを読んだ。
 一言で言えば「変化」を描ききった小説と言えるだろう(僕がそう読んだだけだけど)。要所要所で季節の描写が出てくる。この描写もそうなんだけど、比喩をがんばり過ぎて、自分の表現に酔ってるんだろうなあってところがいくつかあった。また時制がちょこちょこ前に戻って説明してくれたりするのだけど、それが説明的に過ぎて引っかかった。
 とは言え、これは島本が、自分の書きたいことをより正確に伝えようとするあまりにこうなってしまったんだろうと思うし、なんか共感すらしてしまう。難癖ばかりつけてみたけど、個人的には悪くない小説だと思った。なんと言うか、折れそうな割れそうな繊細な文章で、恋愛を語っている、それだけの小説なんだけれども、僕が今まで体感したことの無い、そしてたぶんこれからも一生体感することはないだろう世界がこの小説の中にあった。それは僕が男だからかなのはわからないけれど。完成度云々を言えば低いと思うけれども、小説として、何か、良さ(?)を感じた。
 でも女子高生の分際で「あのときのわたしは…」とかイヤに回顧的な考え方は健康的じゃないよね。俺が言えたことじゃないけど。タメの人間が、しかも3年前にこんなの書いてんのかと思うとちょっとへこむ。

シルエット (講談社文庫)

シルエット (講談社文庫)