書を捨てよ、町へ出よう

 寺山修司の書を捨てよ、町へ出ようを読んだ。4つの章を含んでおり、それぞれに面白い、実に読ませてくれる文章だった。どの章でも、おいおいおい!それは飛躍しすぎだよっ!というようなツッコミ待ちみたいな文章をわざと書き、楽しませてくれている。
 いきなりだけど、彼の文章には村上龍に通じていくようなマッチョさがあると思う。言ってしまえば前時代的と言うとこだろうか。断定的でダンディズムを求め…みたいな。
 彼はこのエッセイ集(?)で一点豪華主義の利点を繰り返し叫んでいる。一点豪華主義ってのはゴキブリが出るような3畳のボロアパートに住んで、そのかわりマセラティアルファロメオを乗り回したりすることや、いつもはパンの耳で生きているが週に1度豪華ホテルでディナーを食べたりとか、その類のお金の使い方、姿勢のことである。寺山はこの一点豪華主義を、平均化された生活をドラマに変えることができるかもしれない思想的な行為であると言い、バランス主義(一点豪華主義の逆ね)や身分相応という考え方への挑戦であるとしてこの本の中で章をまたがって何度も薦める。これがいいかどうかは価値観の問題なのでノーコメントとしておくけど(こういうときに価値観という言葉を持ち出すのは最終手段で最低の行為だということはわかっているから指摘してくれなくていいです)それにまつわる彼の文章は一読に値する。特に第4章不良少年入門は寺山が大部分を面白半分に書いているのでかなり面白かった。
 寺山が紙とペンでつくる詩というモノローグの限界を感じて戯曲と言うダイアローグに移っていく過程を本人が説明している話も興味深かった。