サマセット・モーム作、月と六ペンスを読んだ。ゴーギャンをモデルとした、芸術の悪魔に憑かれた画家ストリクランドの人生を、ある作家を語り手として、描いた小説。圧倒的なエゴイズム、「美」というものへの飽くなき欲望、そんなものが描かれていた。
ストリクランドのその日のパンにも困るほどに芸術至上主義(この言葉は適当じゃない??)な生活は、他人の目から見ればストイシズムのように見えるが、本人にとっては普通(?)の生活にただ興味が無いだけであるというような描かれ方をしていて、凡人である読者にはリアリズムを持って迫ってくる。個人的には憧れのような感情さえ抱く(実際にすることはないだろうと冷めた見方をしていながらも)。また、ストリクランドに対してのストルーフェの存在が天才という確固とした不条理を浮かび上がらせ、ストリクランドという人間をさらに印象的なものにしている。
なんかうまく言えないが、天才という雲の上的な存在を、世間から離れたものとして描いた、そんな遠いものへの憧れみたいな魅力が詰まった小説だと思った。
トランプがカルタと訳されていたり、土人なんて言葉が遣われていたり、なかなかにレトロな翻訳も作品の雰囲気にマッチしている。
- 作者: モーム,行方昭夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/07/15
- メディア: 文庫
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