カナリア

 塩田明彦監督のカナリアを見た。オウムというものに対する塩田の回答というか消化した後の反応みたいな映画だった。他の人のレビューを見るとなかなかに評価が高いのだけど、僕には彼のオナニーを見せられただけみたいな感想を持った。
 京都シネマで見たのだが、僕と同時に劇場にいた人たちはみんなシリアスな雰囲気を持って見ていたので、僕は鼻から息を抜くくらいでこらえたのだが、これは存分にコメディーの要素を持っていると思う。出てくる子役の女の子がセリフ棒読みだったり、一緒に旅をする女の子が将来お水系な顔していたり、つぐみが「あばよ!」って言ってみたり、ラストで主人公の男の子が白髪になっちゃったり(これは笑うとこじゃないかも知れないけど)、エンドロールで向井秀徳の歌が流れたり。。。笑うとこだなと思ったところで周りを見回してみたのだが、誰も頭を動かしていなかった。たぶん僕が笑ったら、周りのやつらはこの映画を侮辱したと思ったんじゃないかな?やたら一体感のある劇場だった。というより、自分も含めてだが、笑うとこで笑うのを恥ずかしがる傾向が強いと思う。いいこととは思えないけどなあ。
 テロを起こした教団ニルヴァーナの信者の子供、光一が妹を取り戻しに東京に向かう途中で女の子がついてきたり、レズの女2人と出会ったり、元信者に助けられたりというロードムービー的な作品なのだが、途中途中で光一の教団での過去が挿入される。なんかツッコミどころは満載につくられてる映画なんだけど、ツッコミどころを忘れました。
 ラストに関しては何と言っていいか。。。つまり解脱したってことなんだろうけど。明るい未来を象徴するような3人の歩んでいく姿も短絡的な気がするし。ここで考えながら書いているぶんには、つまりロジックで考えれば納得してしまうというか、させられてしまうんだが、見た瞬間に感じた生の感想は断固拒否だった。生理的に不快感を感じた。なんでかはよくわかんないんだけど。祖父を薄っぺらい悪人にしてしまったり、解脱してはいめでたしめでたしってとこが気にくわなかったのかな?
 と文句ばかり言っているけど、西島秀俊は確実にこの映画をいい方向に進ませている。彼の存在感が間違いなくこの映画を引き締めている。
 オウムネタの映画を見るなら、この映画よりは森達也のAとか是枝のディスタンス見た方がいいでしょう。
 と書いた後他人のレビューを片っ端から見てみたら、やっぱり評判いい。。。俺はどうしてもストンと腑に落ちないんだけどなあ。