解夏

 磯村一路監督の解夏を見た。図らずも2日連続でこの監督の作品を見たわけだが、こっちの方はなかなか良かったと思う。
 難病に侵され失明するという運命を知った男が、教職を辞し、故郷長崎に戻る。恋人が追ってくるが、病状はどんどん進行して…というストーリー。愛するがゆえに恋人を遠ざけるなど、すれ違う様子が切ない。そして、お寺の住職が問いかける。「人が最後に見ておきたいものはなんでしょう?」と。これはもちろん見ている側にも問われている。
 この映画は皮肉なことに映像がものすごく美しい。どこか匿名性を帯びた都市ではなく、長崎という宿命付けられた場所の美しさが作品中にどんどんとこれでもかこれでもかと出てくる。明と暗、コントラストが印象的でアップも多用という、やたらとメリハリの利いた映像だった。そして、目で見る映画というメディアで、目が見えなくなった経験の無い人に、目が見えなくなる過程というものを伝えることの限界が見える。マーヴェリングのような映像やピントをぼかした映像や乳白色のベタ塗りのスクリーンが見る側に与えられる。見る側はそれを目が悪くなっていくというのはこういうことなんだと受け入れるしか選択肢が無い。そこはちょっと気になった。気にしてもしょうが無いけど。
 あとはラストについて。どう終わらせるのかなと期待を持たせるようなストーリーの展開をしていたので、あの予定調和的な終わり方は物足りなさが残った。かと言って、僕自身に終わり方の代替案があるわけではないんだけど、「失明した時に苦しみから解放される。それがあなたの解夏です」という禅的で印象的な言葉があったから、愛があれば万事OKみたいなのには走って欲しくなかった。でも泣き所のたくさんある、心揺さぶる映画だったと思う。
 加えて、学校を辞めると生徒に伝えたシーンで、クラス全員が涙するシーンはやり過ぎ。あのシーンは確実にこの映画の汚点。そして冨司純子がすごく効いているんだけど、医者役に古田新太ってどうよ。

解夏 [DVD]

解夏 [DVD]