バグダッド・カフェ

 パーシー・アドロン監督のバグダッド・カフェを見た。起承転結をしっかり意識してつくられた、基礎をないがしろにしてない映画だった。
 アメリカ西部の砂漠にある枯れきったモーテル、バグダッド・カフェ。そこに夫とケンカ別れしたドイツ人女性が訪れることによって、全てが変わっていくというお話。この映画にはダメな人間、決定的に足りない人間ばかりが出てくる。全く働かない夫、いつもイライラしているその妻、いつも遊び歩いている娘、へたくそなピアノ弾き、パッとしない画家…etc。くすんだ黄色い映像で撮られているように、砂漠のように乾き、枯れ、ひび割れていた。が、ドイツ人女性ジャスミンの登場で、最初こそ衝突し、反発するが、なじんだ時に全てがいい方向に向かう。砂漠=バグダッド・カフェを活気づかせるのがマジック=魔法というのがものすごく象徴的だ。それ以外にもラストシーンの嵐とか、象徴的、暗示的なシーンがあって印象に強く残った。
 上で書いたように、場面場面で基調とする色彩を変えて、場面の内容を暗示していたり、随所随所で音楽を挟んだり、巧みに作られている映画だと感じた。色彩的にすごく品がいい(これは個人個人の趣味だけど)。が、何よりも、個性あふれる出演者たちがこの映画を作り上げている。みんなダメ人間を演じているわけだが、ものすごくキャラが立っている。みんながみんな主張の強いやつらなのにつぶしあわずに引き立っていた。
 あとはピアノ弾きの「デブ女」っていう言葉がなんか忘れられない。

バグダッド・カフェ 完全版 [DVD]

バグダッド・カフェ 完全版 [DVD]