マイケル・ラドフォード監督のイル・ポスティーノを見た。言葉、特に詩の力を信じる人によるその力を信じる人のための映画だった。
フィリップ・ノワレ演じる、主人公マリオに大きく影響を与える詩人の言葉は、しゃべっている時でさえもメタファーを追い求め、映画全体を通して、詩の匂いがぷんぷんする(詩の香りが漂っている)。主人公マリオをそれにどんどん染まっていく。舞台となっているイタリアの小島の景色や人間の生活も、なんとも言えない時間と空気の流れを観客に感じさせ、うまく言えないが詩的なのだ。また、影を強く意識したような映像も一役買っている。
主に対象としているのが資本主義社会の都会の住人だとして、この僻地である小島で起こる共産主義を伏線に持つ出来事は、圧倒的に外側の世界での出来事であり、そのことも現実感を薄めて、この映画を詩に近づけている気がする。
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