誰も知らない

 是枝裕和監督の誰も知らないを見てきた。第一印象としては、うーん、映画評論家が好みそうな映画かな、といったところか。
 母親に放置された4人の子供たちの姿をドキュメンタリー見たいな画で撮った作品で、作品としてのバランス感覚をすごく感じた。弾むような音楽をBGMを従え、つつましくも明るい家庭(この作品の前半ではもはや一男一女がいる夫婦として描かれている)の姿のシーンと、一転して愕然とするほどの過酷な現実と直面するシーンとを交互に配置し、おまけにその落差をバッチリつけていてメリハリをつけてあり、見る側として飽きることなく見れた。
 これもそうなのだが、とにかく映画としてうまくつくられている。そういうところがあまのじゃくとしては納得いかないところなんだけど、ただ、映画としては良くできている。それは作品自体としても概念(というのか?)としても。
 作品としてこの映画を成功に導いているのはもちろん脚本も書き監督もしている是枝の力なのだが、それを具体的な形につくったのは出演している子供たちであり、この役者たちの貢献に触れずにはこの作品は語れないだろう。カンヌで賞を取ったから柳楽優弥ばかりが取り上げられたのだけど、他の子供たちもいい演技している、というより演技ではないのかもしれない(だからドキュメンタリーのように見れる)。茂とゆきはもう近所の子供そのものだった。ゆきなんてロリコンでない俺でもかわいいと思ったよ。そして(1年以上に渡って撮影したらしいが)このストーリーと共に子供たちが成長をしていくということも作品に彩を加えている。また子供が主役であるのは異論のないところだと思うが、脇を固める大人たちもそれぞれに魅力を見せていた。母親役のYOUは(もちろん是枝が非難するような撮り方をしていないからではあるけども)一部のシーンを除いて悪役になっていない。彼女のキャラがもっているものが影響しているんだろうな。
 概念として。言うまでもなく、映画というものは多数派意見に異論を唱えうるメディアだ。この事件(実際あった事件なのだが)をニュースにお任せすれば、間違いなく母親を圧倒的な悪人として報道し、徹底的に断罪するだろう。そこには多角的な見方は存在せず、母親のよさに触れることは人でなしのすることと言われるだろう。この映画は極力母親の無責任さを目立たせず(もちろんしっかり描かれてはいるのだが、メインとなっていない)、画一的な見方というものに疑問を投げかける。まあ、当たり前のことか。。
 まあ、象徴としての階段の使い方とか、部屋の内側と外側の温度差とか、巧さというのが鼻について、すごく出来がよ過ぎて気にくわない(悔しい?)という作品でした。是枝の長編の中で一番出来がいいんじゃないかな。ワンダフルライフの方が好きだけど。木村祐一寺島進をチョイ役で出しているようなそんなネタは好き。

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