タマや

 金井美恵子のタマやを読んだ。テンポよく進んで読みやすく、仕掛けも面白かった。
 出てくる登場人物はみんな個性的過ぎるほどキャラも素性も個性的であり、物語が進んでいくにあたって起こる出来事も笑いたくなるほどにうまい偶然が重なることになっているんだけども、不思議と「んなうまいことはねえよ」とはならずに読める。はてな。多分、読者にあれと思わせる間もなくずんずん突き進むテンポの文章と内容に寄るのだろう。読点で引っ張られ続け、さらに畳み掛けるような情報量で前に前に進ませられる。それが不快でなく心地よいのがこの小説のすごいところだ。
 タイトルの「タマや」からもわかる通り(実際ノラも出てくる)、他の作品から借りてきてる固有名詞がたんまりあり、相変わらずのインテリっぷりに多少うんざりもするのだが、彼女の他の作品の登場人物も顔を出していて、それは読んでいる人には多少なりともサービスになっている。
 なんつっても、面白けりゃなんでもいいんだよね。そうそうこの本(河出の文庫)のもう一つの読みどころは巻末の保坂の珍しいあまりにもダメダメな解説ですね。

タマや (河出文庫)

タマや (河出文庫)