快楽主義の哲学

 澁澤龍彦の快楽主義の哲学を読んだ。澁澤の作品(って言っても、いわゆる澁澤作品ではない気もするけど)は初めてだったが、なかなか面白かった。
 幸せという名の、他人の作った規範に則って生きるのではなく、動物の如く、一瞬の快楽を求め続けて生きろよ、お前ら!みたいなことが根本として書かれている本で、その実例として、ディオゲネス、李白、サド、ゲーテオスカー・ワイルドジャン・コクトーなどを引いている。また、欲を満たせ満たせみたいなことも書かれている。なんか読んでいて感化されそうにはなってしまうが、この論の欠点として、やつらがあまりにも偉大なことが挙げられるだろう。いわゆる一般人はあんなに絶倫じゃないし、あんなに美食したら胃もたれして快感じゃないし、…ということ。まあ、そんなこと言っている時点で俺は小市民なわけで、少し残念になる。やつらのあまりの偉人ぷりには衝撃すら感じるし、その絶対的な美学は尊敬に値する、当然ながら。
 つまり、世の中に強い人間と弱い人間というカテゴリーがあるとしたら、澁澤は前者に属しているし、この本も前者に向けて書かれているということ。ただ、小市民でも憧れとして楽しんで読むことはできると思う。まあ、あんな人間になりたいという自分の衝動を感じることもできるでしょう。特に永ちゃんの某書とか三島の〜入門みたいなマッチョな本の好きな人にはぴったりだ。

快楽主義の哲学 (文春文庫)

快楽主義の哲学 (文春文庫)