カンバセイション・ピース

 保坂和志カンバセイション・ピースを読んだ。本人が最高傑作と言っているのもうなずける、挑戦的でおもしろい(というより興味深い?)作品だった。
 主に世田谷の古い家と横浜スタジアムという2つの場所について、空間として、そこに残っているもの、漂っているもの、それらについて論考していて、作者が新潮で連載している小説をめぐってに続いていくような、小説の体裁はとっているものの中身は論文というような小説であり、つまり、読み手を選んでしまう一面はあるけれども、この作者の論考に興味を持てる読者にとってはかなり興味深い小説だと思う。小難しいことをあっちこっちと揺らめきながら考えるので、無機質なものになりそうなところを、愛するベイスターズや猫が思考の素材になっていることや、そして主人公かつ語り手の男がよく言えば個性豊か、普通に言えば変な登場人物と共に思考を深めていくといった手法が救っている。
 まあ、文学とか哲学というものに対して興味のない人にとってはうっとうしい本に過ぎないだろうけど。

カンバセイション・ピース

カンバセイション・ピース