杉本博司:時間の終わり

 写真というのは何?
 杉本博司という現代芸術家のせいでそんなことを考えさせられた。
 彼の作品は主に「写真」なのだが、あり得ないモノが撮られていたり、ヘンリーⅢ世などを肖像画から精巧に蝋人形で再現したものを撮影したり、光ではなく影を撮影したり、建築を無限遠焦点で撮影して「強度」を試したり、数学的な式に視覚に訴える形を与えて撮影したり…etc.と写真の限界に挑戦し、写真の領域を広げようと試みていて(すごい陳腐な物言いで泣きたいが)、その上それは人の心に訴え得るだけのクオリティを持っている。何が本当で何が本当でないのか。というか、そもそも本当って何よ?というような、袋小路的な疑問が想起される。イライラさせられるような疑問なのだが、それを補って余りある、いわゆる魅力がこの展示にはあって、上記の疑問を胸に抱きつつも先の展示品に進んでいった。そのまま疑問は残っている。
 彼は言う、たとえ虚像であっても写真に収めてしまえば実像になってしまう、と。
http://www.mori.art.museum/contents/sugimoto/index.html