柳生一族の陰謀

 脚本がよくできてるというか、作り手の意図どおりもしくは意図以上にできているのだろう。観始めてからすぐ、これでもかこれでもか的にドラマを畳み掛けてくる。仁義なき戦いの方がよくできてるとは思うけども、この作品だって、すごいとしか言いようがないくらい力技でねじ伏せられた。ストップモーションはここというところで決めてくれるし、寄りと引きも、リアルでは決してないんだけど心地よいのがきっちり決まっていて、すごく気持ちいいんだけど、独特の回るようなカメラワークは酔うような感じで個人的にはあまり好きでなかった。まあ狙い通りなんだろうけど。
 この映画は、一般的に信じられている歴史的史実を圧倒的に無視して、最後にちょっと断るだけで済ませるようなある種傲慢な映画で、つまり一言で言うと、全くもってリアルではない。が、観る側はいつの間にかフィクションの中に誘われていて、その世界の中では「リアル」というか、齟齬がない。ビリーバブルとでも言えばいいのだろうか。兎にも角にも、映画とかこういうフィクションにおいて必要なのは、リアリティなのではなく、ビリーバビリティ(とでも言えばいいのだろうか)なんだなということを考えてしまった。作品に考えさせられたというか、勝手に考えた。
 よく言われているようだが、萬屋錦之介の歌舞伎調の台詞回しも(これは個人的な問題な気はするのだが)なぜかこの映画にしっくりくる彩りを与えててよかった。なんか、この映画には、映画こそが最高の娯楽なんだと自負しているような強い威厳を感じたし、それを持つに値するだけのエンターテイメント性を持っていて、楽しませてもらった。役者陣も豪勢で、端役の小林稔侍とか、若き日の真田広之とか見れたし。この豪勢な俳優陣がそれぞれを殺さずに、そのままで(一人完全な主人公になったりせずに)映画になっているところ、登場人物のキャラがみんな立っているところ(実際観たらとんでもないキャラしか出てきてない。漫画みたい。本当にエンターテイメント)が、やっぱり深作欣二のすごいところで、それは殺陣のシーンでテレビドラマなどのように、一人が中心になって殺陣が展開されるのでなく、いくつもの核を持った殺陣をカメラが動きながら捉えているというところに端的に現れているのかなとも思った。

柳生一族の陰謀 [DVD]

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