プーシキン美術館展&コレクション4

 個人的にはゴッホの「刑務所の中庭」という、囚人たちが刑務所の中庭で運動をしている絵が最も印象に残った。閉塞的な背景、終わりのない循環する運動、黒で輪郭をとられた囚人たち、上下の色彩の対比、アシンメトリーで下に対象が集中する構図、すべて不穏でただならぬ雰囲気をつくっている。いわば、僕にわかるくらいわかりやすい絵だった。
 モネ、セザンヌゴーギャン、etc.、超をつけて問題ないレベルの有名画家の絵がたくさん展示されており、たぶん一般的な評価も高いのばかりだったのだろうが、いかんせんわからない。なんとなく良いというのは感じるのだが、それを言葉にするのは難しい。というか、ほぼ不可能。それに大して現代芸術のほうは単純に面白い作品というのが多々あると思う。例えば、今回コレクション4で展示されていた、「ボクシング・ペインティング」という作品は間違いなくグローブに墨つけてキャンバス殴ったんだろうなという制作風景が見えて、個人的には面白かった。それ以外も何かしらやっちゃいました的なものが多くてバカさ加減が感じられ、僕は好きだ。
 美術館に来場者が一人ということはほとんど無くて(特にこういう有名な美術館だとそうなのだが)、周りにたくさん他人がいるわけで、やはり展示品だけじゃなくて、そいつらも視界に入る。以前行ったヴィヴィアン展なんかでは来場者もヴィヴィアンで揃えてきているやつが多いわけで、やらかしているようなやつも当然いて、そっちも観ていて存分に面白かった。が、今回のプーシキン美術館展では、周りにいるのは有閑マダムみたいなのとか、じいさんばあさんみたいなのが来場者の9割以上を占めていて、疎外感とともに、つまらなさすら感じた。