日本の近代文学を例に取り、歴史的に遡行し、現在おかれている状況の起源を探ることで、その状況の内側にいると、見逃しがちで、前提とされがちな事柄のその本当の危うさを白日のもとにさらす。すなわち、ある一つの思想があった時に、その思想が自明として無自覚に受け入れてしまい、その前提の下に他を批判しているような、その根本の部分を疑いにかかる。そして、飛躍や齟齬が無いとは言わないし、初心者にわかりやすい文章になっているとは言えないが、その試みは半ば成功している。
面白く読むことができるのだが、すでに柄谷の批判の対象である、西欧的な、近代科学の下に教育され、その思考体系に染まりきっている僕には飛躍があると感じられてしまう。
- 作者: 柄谷行人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1988/06
- メディア: 文庫
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