スパイク・リーらしい映画だなあと、ぽつり思った。
冒頭、オーディションでクエンティン・タランティーノ演じるQTに上を脱いで乳を見せろと言われて怒って断るシークエンスと、最後に別のオーディションで乳を見せろと言われて断って帰るシークエンスとは相似につくられているけど、主人公ジュディの心持ちがまったく違う。女優を目指して契約しているエージェントとレッスンのコーチに縁を切られて、しぶしぶ始めたテレフォンセックスの仕事が彼女を成長させているからだ。この映画はその成長を描いた作品である。
ジュディがテレフォンセックスの仕事を楽しみだし、誇りすら感じる様、テレフォンセックスの熱演振りは手放しで面白い。飛び交う俗語。乱れる息遣い。エスカレートしていく気持ち。そういうものがかなり明るく肯定的に描かれ、観客は娯楽を味わう。特にアポインターたちの講習会のシーンやジュディが最初の応対をしたシーンなんかは、テレフォンセックスという内容にもかかわらず、エロスはそこに無く、ただただ爆笑だった。対照的に狂った男たちからの電話が来始め、映画世界がサイコでカルト的な雰囲気に一気に堕ちていくのだが、その落差がすごい。デフォルメされた映像やジュディの表情が恐怖を煽る。
冒頭とほぼ相似につくられているラストのシークエンスへと続く一連の流れが(つまり最後部)ものすごく後味のよいものになっていて好感が持てた。カメラが廊下の直線方向に構えられ、その直線上を、ジュディが夢を抱えてこちら側へ進む(これは歩いているのではなく、進んでいるのだと思う)1カットが実に印象的だった。
クエンティン・タランティーノ、マドンナ、ナオミ・キャンベル、ハル・ベリー(これは微妙か?本人としての出演だしな)、そしてスパイク・リー自身の役はキャラが立ってて、この映画の娯楽性を補強している。説教臭くならない微妙なバランス感覚がこの監督の才能を垣間見せていると思った。
- 出版社/メーカー: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
- 発売日: 1997/06/06
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