TAKESHIS’

 パラレルワールドと虚構内虚構の合わせ技の構造をもつ映画だけども、言われているほど複雑ではないと感じた。パラレルワールドについては放っぽったままだけど、虚構内虚構については夢という形で全て回収しているのだから。また、パラレルワールドの中で、売れない役者「北野」と大物「ビートたけし」の世界は幾度か交錯するだけで、ほとんど「北野」の物語であるわけだし。
 見ている最中の印象としては、次は何を持ってくるのかというワクワク感と共に、好感を持って観ていたのだけど、こうやって書くために論理立てて振り返っているとイマイチなのかなと思い始めた。投げた疑問がわかりやすく解説されてしまうところが弱みな気がしている。過剰に説明的なカットが挿入されるし、全て虚構を夢という形で回収してしまっているので、観客側が好き勝手な解釈をできない。おまけに夢で遭いましょうなんて曲を流しさえする!!さすがにこれはありゃっと思ってしまった。
 しかし、タップダンス(やりすぎ感は十分あるけど)、美輪明宏の歌声(まさかヨイトマケの唄がこの劇中で耳にすることができるとは思わなかった。やつは確かにすごい歌い手だと初めて思った。)、新体操など、他の類の表現を虚構の中に貪欲に組み込んでいるのは、芸術臭がして許せない人がいるのはおいといて(ヨウジがそそのかしたのかやつがしたのか、北野の部屋や家具が初期ゴダールみたいな色。ちょっと恥ずかしい)、フィクションの勝利を高らかにうたっている気がする。後で考えた結果よりも観ている最中の感覚を信じているので、やっぱりこの映画はよかったんじゃないだろうか。上手く説明できてないわけだけども。フィルムで観たのも好印象の一因だろうな。北野武がやりたいようにした、盛りだくさんの自慰作品だから、やつが嫌いな人は絶対見ちゃダメ。北野映画大好きならどうぞ観てください。京野ことみの乳を覗きたい人もどうぞ、エロくないけど。乳よりかは、劇中の黒のローバーの方がずっとずっとエロティックだった。同じく赤のポルシェも出てくるのにこっちはぜんぜんエロくない。

TAKESHIS' [DVD]

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