ハンナとその姉妹

 実によくできたフィクションでありドラマだと思う。ハンナ、ホリー、リーの3姉妹を中心にハンナの夫エリオット、元夫ミッキー、3姉妹の両親を含めてそれぞれに悩みを抱える人間を細やかに描いていく。
 この映画は簡単に章立てされているのだが、最後の方の「人は結局人生が無意味だと悟るだけ」という、トルストイの言葉で始まる章で、病気恐怖症であり人生の無意味さに悩んだミッキー(ユダヤ人)は、意味を求めてカトリックに入信しようとしたりするが、何も得ることができなくて、ライフルで自殺しようとして失敗し、外をぶらぶらしたところでふらり入った映画館で古い映画を観てこう悟る。
 人生に意味を捜したところで見つからないんだから、楽しもう。その後は知らん、と。
 (まあ、ミッキーはウディ・アレン自身が演じているし、分身でもあるんだろうね。)
 この映画も特に意味なんてない。何人かの人生の一部が、スクリーンの上で展開され、多少幸せな形で映画として終わるだけ。でも、観客はその2時間弱をブラックジョークにクスリとしながら楽しむ(もちろん個人差はあるけれど)。それでいいじゃん的な映画。
 内容としては不倫してるし姉の元旦那と結婚してるし、なかなか濃ゆいんだけど、全体としてフラットな印象。発される言葉と裏腹な本音はモノローグという形で観客に示されるし、感情移入とまではいかなくても共感をしてしまう。ゲロッパ!よりも断然できがいいな。

ハンナとその姉妹 [DVD]

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