ゆれる

 いつもはガラガラの同志社ハーディーホールが超満員だったくらい、皆さんの関心が高いらしい「ゆれる」、期待に違わずおもしろかった。観かたも楽しみかたも幾種類も用意されていて、たぶん人それぞれ思うところも考えるところも違うんじゃないかと思う。オダギリJの葛藤を観てもいいし、兄弟というものを観てもいいし、シリアス要素もコメディ要素も多分に含まれる、観終わった後に「あそこは・・・。いや、そうじゃなくて・・・」ができる昔っぽい映画らしい映画だった。もちろんピエール瀧木村祐一の確信犯的安売り演技を観てもよい。俺は8ミリを見るシーンでパリ、テキサスを思い出したし、なんでそのフォード7年以上乗ってんだよと思ったし、鏡だけじゃなくて面会室のアクリル板でも鏡のシーンみたいなことできるんだと思いながら見た。
 結構安っぽい感触はあるんだけども、そこらの駄ドラマと違うのはまず、BGMが極めて少ないこと。しつこくBGMかけて視聴者を冷めさせる演出とは違い、背景の音を基調としたサウンドが結構効いていて、ベタに無音なんかもすごいいい感じだった。
 直感的に、なにか男女の描き方が女性監督・脚本っぽいなと感じたんだけど、なぜかはわからない。とにかく、題になっているように、様々なものやことが‘ゆれる’。オダギリJ演じる弟猛や香川照之演じる兄稔だけにとどまらず、登場人物の多くの心はゆれる。そして、記憶や、記憶を手がかりにするしかない事実もゆれる。ゆれるをキーワードにして観るべきなのは・・・当たり前か。
 西川美和の手のひらの上で遊ばされたようなそんな気持ち。評判のいい映画を褒めるのはつまらないがまあ、観て損しないでしょう。シネカノンってのがいけ好かねえけど。これは強調するけども、映画に痛快とか納得とかスッキリとかを求める人は死んでも観てはいけません。
 あと疑問がいくつかあるんだけど、裁判シーンで稔のいすの大きさって小道具さんが大きめにしてるよね?自信がない。行きずりで中出しってレギュラーなのか?いや別にウルトラマンと辻ちゃんじゃないけど。

ゆれる [DVD]

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