火垂

 まず、長い。最初のほうはかなり画面が緊迫感まみれで、こんなの3時間も耐えられねえぞ、と思っていたら落ち着いてきたのでほっと一安心したけども、それでも長い。最後まで観れるけども、なんだかなあというのがいくつかあって、それは河瀬直美がこの作品を作っていたときに仙頭直美だったということが色濃く反映されていて、脚本が愛をやたらと肯定的に描くというか、むやみにラブってて酔っているのが僕にはきつい。
 この映画の価値は多分半分以上が路上ストリップのシーンにあって(個人的にはこの映画はあのシーンのためにあると思う)、近鉄奈良駅前という行ったことのある人にとっては「え、ここで!?」というような公共の場でストリップ、しかもミュージカル映画のように、ストーリーから浮き上がって踊りがあるのでなくて、物語の中にしっかりと含まれながら成立しているという、個人的に忘れがたいシーンなのだけど、ここでも最後にキスなんぞしやがって、なんだかなあという気分にさせてくれた。キスがなければ、台風クラブのあのシーンみたいになんだかわからないけどすげえという度数がもっと上がっただろうな。河瀬直美も女なのですね。
 あと、河瀬直美らしいと言えばそれまでだけど、やたらめったら手持ちで撮るのが、スクリーンの手前に人間を想起させるのがうっとうしい。効果があるとこではあるんだろうが、やり過ぎというものがあると思う。
 ストリーミングで観といてなんですが、画はきれい。ただ、花火は色が映えない。ドキュメンタリー的火祭りシーンはいい。とにかく観るなら路上ストリップを観てください。
 そしてビデオ・DVDが少なくともamazonにはないことにびっくり。

火垂(ほたる)

火垂(ほたる)