エドワード・ヤンの恋愛時代

 原題が「獨立時代」なんだけど…。英題にしても「A CONFUCIAN CONFUSION」なんだけど…。借りるのに恐ろしく躊躇させられるタイトルをどうにかしてほしい。
 確かに恋愛はたぶんに含まれるのだけれど、大学時代の同級生を中心とした、幾人かの3日を追った群像劇でカメラが主に追っかける主人公チチ以外はわがまま極まりない女社長、押し付けがましい恋人、セックスのことばかり考えている腐れ芸術家、思考が自分の方にしか向いていない作家、頭の回転の悪すぎる御曹司などなかなかに個性の強い性格で、観ているだけでイライラさせられる。というわけで、僕はチチに感情移入しつつ見ていたのだけれど、当たり前のことながらコミュニケーションは難しいとM/OTHERでも思ったことを再び考えてしまった。まあこれだけエゴとエゴがぶつかり合っていい方向に向かう方が難しいとは思うのだけど、それだけじゃなくて人間と人間が分かり合うということの不可能性と、でもそこからスタートしなければいけない現実の途方もなさと結局は落ち着くところに落ちつく、どうにかなってしまう感のいい加減さに複雑な気持ちになった。最後のエレベータエピソードはきれい。男の顔以外は。
 この映画が他と違うと思ったのは、カメラが主に(ほぼ?)第三者視点なのだけど、そのカメラの位置が被写体に近いこと。登場人物の誰の視点でもないのに、ものすごくドラマの現場に近い位置に自分がいるような錯覚は、違和感ではなく不思議に面白かった。
 でもエドワード・ヤンの作品としては枯嶺街少年殺人事件の方がずっといいと思う。あれは本当に切ない。そしてそれを思い出す度に彼の物語が終わってしまっていることに悲しみを覚える。
 ついでにこれも貼っつけておく。http://www.cmn.hs.h.kyoto-u.ac.jp/CMN9/edward-yan-interview.html

エドワード・ヤンの恋愛時代 [DVD]

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