昔の日本映画と似ている。軽くぐうたらな父親、口うるさい母親、知らず知らずと彼女に甘えている自分、耐えながら思ってくれる彼女、貧しい家族、知ったような口を聞く大人、などの既に類型化されたような登場人物たちと、貧しさゆえに忍ぶことを知るような時代背景。そんな、今の日本の文脈からすると、かけ離れたような物語なのだけれど、心に響くこと響くこと。それは、映画が普遍的な心情を捉えていることもあるし、僕が弱っているということもあるだろう。登場人物の心に巣食う翳ではなく、こういう人間が置かれている環境から生じている翳というのは最近目にしなくなった気がする。
筋として、恐ろしくオーソドックスというかベタベタなところを歩んでいるストレートなお話なのに、観ていて、何かいろいろなものを思い出した。例えば、ミツバチのささやきやゆれるのような。冒頭の電車からの風景、山肌を沿い、トンネルと重い緑の木々の中を進む映像からして、特別なものを持っていると思った。
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