ヤンヤン 夏の想い出

 エドワード・ヤンの「ヤンヤン 夏の想い出」。この邦題微妙。言うほどヤンヤンだけメインじゃないし。
 3時間弱ある数字からすると長い映画。しかも衝撃的な物語でもないし、テンポがいいわけでもない。最初に設定がドンと提示されるので、台湾人を簡単に見分けられるわけではない僕はそこだけ多少戸惑ったが、その後は坦々と話は進む。なのに、全然飽きなかった。飽きなかった理由がわからないのだけど、とにかく台北の高級マンションに住む家族とその周辺のひと時が丁寧に描写されている、それだけを3時間弱も観てしまった。衝撃的な物語でないと述べたが、この映画は恐ろしくたくさんの印象を僕に残した。
 途中、挿入されるテレビゲームの画面以外は何一つ不快でなかった。父親のウィラポンみたいな顔、ヤンヤンが女の子に対して抱くまだ形を持たない感情、シェリーが泣くホテルの窓に反射する東京タワー、イッセー尾形演じる大田と父親との何にも担保されていないのに厚い信頼、姉ティンティンがときめきながら着たドレス姿、全部やさしく僕の心の中に残っている。

ヤンヤン 夏の想い出 [DVD]

ヤンヤン 夏の想い出 [DVD]