それでもボクはやってない

 周防正行の映画。フジで放映されてたので観てみた。最初の10分くらいでいやーな気持ちになったので、何もトリアーの映画と続きで観ることもないだろうと思って観るのをやめようかとも思ったのだけど、多少のネタになるかと思って最後まで観た。
 観終わってみるとさほど嫌な気持ちではない。もちろん爽快な気持ちではないのだが、トリアーの映画と違って、性善説にある程度肩入れされていることと、人間そんなに悪いもんじゃないよというメッセージ(大森南朋演じる乱暴な刑事に「これも仕事だから」と言わせたり、裁判官の置かれている環境を語らせてみたり)がちょこちょこと挟まれていたので、作り手の思うように心動かされるのは癪だが、まあその通りに動かされたのだろう。あくまでも人間が悪いのではなく、システムが悪い(では語弊があって、不完全であるということだろう)ということが終始提示される。全体最適や分業システムで平均化された法廷であり、被告人と原告のためにそのたび用意されるものではないというジレンマが描かれるが当然改善策は提示されない。ラストはまあそうなるだろうなという方向に進んで行ったし、構わないのだけど、最後のモノローグはどうかと思った。被告人が真実を知っているというあの描き方はよくないと思う。原告と被告人が、どちらも嘘をついていないのに陳述が真っ向から食い違うということを丁寧に描いた割には、あまりにも乱暴な意見と言うしかない。
 個人的な意見として、この映画は裁判官によって判決が左右されすぎる、つまり裁判官一人の権限が大き過ぎるということを示唆し続けているように感じられたのだけど、行き着く先は陪審員制度ですか?フジサンケイグループの態度はどっちにあるのか興味がわいた。
 しかし、フジテレビ様の資本が入るとキャストはやりたい放題ですね。結果的に唯野未歩子はなかなかいいと思う。山本浩司はどうかと思うけど。ってか蘭々って。