柴崎友香の星のしるし。わざわざ文學界買ってしまった。
とりあえず、読んでいて2、3ページくらいで気づくのだけど、いままでの柴崎友香と違うタッチに驚かされた。いままでの彼女の作品にはもっと宙ぶらりんのぬるい温度の人間に満ち溢れていたと思うのだけど、この作品にはシリアスな雰囲気の中、それなりに地に足をつけたある種まともな人間ばかりがまともに考えて息づいている。主人公果絵の祖父が死んでみたり、果絵は母親に対して冷めた目で見ていたりといままでの柴崎友香の小説には出てこなかったひとつひとつの物語に面食らいながら読んだ。
私が個人的に彼女の小説に求めていたことは、世間で生活しているのだけど、何かなじめない浮ついた感じの登場人物たちがそれに気づき、悩みつつも悩み過ぎずに日々生きているというような、嘘っぽくない、生々しいいい加減な人間たちの群像なので、そういう意味ではこの作品は期待はずれだったのだけど、柴崎友香と言う作家が成長していっている、少なくとも変わっていっているということが見て取れるので、やはり今後に期待してしまうというなんとも無責任な感想をもってしまった。
主人公果絵が占いに対して、全くばかにしているというわけではないのだけど、かなり冷めた目で冷静に見つめている姿が非常に印象的だったのだけど、下世話な話で興味があるのは、柴崎友香自身も果絵のような男らしい視点で世の中を捉えているのかなということ。
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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