誰がために

 日向寺太郎の誰がために。これって少年犯罪映画的に扱われているみたいだけど、果たして?というか、そんなに描けてないと言いたいだけなんだけど。
 まず、構図であるとか、お話であるとか、せりふであるとか、ものすごい古風というか、戦後の白黒をカラーにしたの?ってくらいオールドスクールなんだけど、その割には手持ちで撮影してるから、多少観客の視線も定まらないし、形式美的なものはない。映画のしょっぱな寂れた街の風景を何カットも挿入してくるのだけど、長いのでうんざりして、この映画観たの失敗だったかなと思ってしまうくらい、映画作家としてのセンスは感じられない始まり方だった。
 確かにストーリーは少年犯罪が組み込まれているのだけど、少年犯罪がストーリーの駆動力になっているかというと、そうでもなくて、あくまでも写真という過去を連想させる小道具を使いながら、民郎と亜矢子とマリの過去と関係性を描いた物語であって、そのドラマ性を増すための装置としてただ少年犯罪が使われただけって感じがした。
 で、この映画がつまらないのは、亜矢子が撮ってきた写真の意味であるとか、伏線を実にわかりやすい形で回収してしまったりする安易さと、「画」のトーンが暗いので、最初から暗ーい話なんだろうなと予想できてしまえるところと、せりふが非常に紋切り型でこっ恥ずかしいところと、家族の面でつらい過去を背負っている女の子を僕が救わなきゃという昔懐かしい男の子映画の人間構図を抜け出せていないところに端的に表れていると思います。ついでに民郎と亜矢子ができちゃうシーンとか「求め合う二人」みたいなコピーがつけられちゃうような感じで、驚くほど恥ずかしかったんだけど、そういうところにも監督の作家性が表れていますね。
 エリカってどっかで観たなと思ったらワンダフルライフとかで頻繁に見てたことがわかって納得したことと、ほんまもん年齢不詳だなということを改めて確認できたことと、浅野って結構どうでもいい映画でも出演しちゃうんだなということがわかったのがこの映画の収穫。

誰がために [DVD]

誰がために [DVD]