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虹ヶ原 ホログラフ

 浅野いにおの虹ヶ原 ホログラフ。重い。
 描かれる世界がとても限定されていて、舞台からして閉塞感があるんだけど、登場人物も数は多いんだけど、過去と現在2つの時間の中で同じ人物が登場してくるし、全員小学校から関係性が書けてしまうような(誰々の兄とか、誰々の父とか)人物で息が詰まるような感覚があった。
 登場人物たちは小学生時代においても、現在においても、レイプしてしまうとか、簡単にセックスしてしまうとか、いじめっ子であるとか、カッコつきの言葉で表現できてしまうようなネガティブな属性を皆抱えているのだけど、それが何か意味深なものではないと思う。それは人間誰しもが持つネガティブなものをただ誇張して描いただけで、この作品の言い難い重さの原因としては大きくないと思う。
 舞台として、郊外が選ばれていると思うのだけど、先に書いたように実に閉じた世間が書かれているので、実質ムラ的な場所であって、そのことがこの作品において大きなものを占めているように感じる。
 で、この閉じられた世界において、鈴木君は病院で過去の自分と未来の自分に出会っているわけだけど、未来の鈴木(爺)から過去の鈴木(少年)は「たとえ世の中がどんなに不毛だとしても、強い意志を持ちなさい。君の人生の行く先は、君が決めていいんだよ。」と言われる。これがラスト。うーむ。でも、その未来は鈴木(爺)が歩んできた人生として規定されているわけでしょ?この閉じた世界からしみ出て行くことが必要なのだと思うのだけど、外は描かれていないわけで、この街で生きていくうえで、何を主体的に決めることができるのだろう?

虹ヶ原 ホログラフ

虹ヶ原 ホログラフ