桐島、部活やめるってよ

 ひさびさに映画館にお出かけして吉田大八監督の「桐島、部活やめるってよ」を観てきた。予想をはるかに上回ってよかった。
 適当な街の適当な高校の人気者の周りの高校生たちを多層的(文字通り)に描き出す。さえない映画部の部長、桐島の彼女でしゃれ込んだ女の子、その取り巻き、脳みそまで筋肉でできていてバレーボールのことしか考えていないゴリラ、何でもそこそこできちゃうがゆえに冷めている男の子、彼に片思いする吹奏楽部の部長などなど、高校生たちの金曜、土曜、日曜、、、、と数日を描き出す。好き勝手に惹かれたり、うざがったり、それぞれに高校生活を送る。そんな映画。
 これは個人的にちょくちょく考えることなのだけど、確かに私たち一人一人はいつもいつも映画的で小説になるような人生は生きていない。でも、その中には(後に忘れてしまうのだけど)、ドラマティックな心の動きがあり、喜んだり、悲しんだり、そういう個人ドラマ的な瞬間はところどころに存在している。この映画は、その「個人」の側に寄り添い、どうってことない高校生の「個人」のドラマを切り出して、再構成して映画として成立させている。おもしろかった。
 原作の小説は読んでいないので、以下推測になるわけだが、この映画は明確に映画的であって、独立した映画として成立している。映画部の前田が(ある種中心的に)立ち回ることによって、自己言及的でもあり、映画ってすばらしいものなんだというメッセージがこれ見よがしに加えられている。これ原作にはないんじゃなかろうかというプロットがふんだんにある。好みは分かれると思うが、私は好き。
 違和感を覚えたのは、今ぱっと思い出せるところで、3点、

  1. 何でいきなり高橋優が歌わなければいけないのかがわからない
  2. 作中で観る映画をわざわざ説明する必要がない。くどい
  3. ドラフトについて説明的でくどい

あとは楽しんで観れました。
http://www.kirishima-movie.com/