夢売るふたり

 西川美和の夢売るふたり、劇場で。
 私にはわからなかった。少なくとも私には映画として面白いとは思えなかった。
 こじゃれた小料理屋を営む貫也と里子が不注意から店を燃やしてしまい、再度店を出すために結婚詐欺的にお金を借りていくというお話。
 まずは違和感を感じたポイントを列挙。今思い出せるところで、

  • 小料理屋の燃え広がり方がすごく不自然(主観的に描くんであれば構わないだろうが、あくまで3人称で描いているんなら、論理的に燃えて欲しい)
  • ウェイトリフティングの後ろからの練習風景で、明らかに右下がりになっていて、さすがにそれはまずかろう
  • 松たか子の自慰行為はエロくもないし、差し挟む必要性がわからん
  • 同じく生理用ナプキンをつけるシークエンスの必要性がわからん
  • 明らかに不自然な傷害を、警察がそのまま受け入れるとは思えない
  • トウキョウソナタ小泉今日子のようなワンショット、がどれも成功しているとは言い難い

と、少なくとも私が違和感を感じて、映画において行かれた箇所があって、切なかった。
 もちろんくすりとさせられる小ネタはちょこちょこあって、それは楽しかったし、特に伊勢谷友介のキレキレっぷりは観ていて惚れ惚れとするほどだった。でも、小ネタを観るためにわざわざ2時間1800円払いに来たわけじゃない。
 とはいえ、中盤まではわくわくしながら観た。これをどうやって映画として終わらせるかに興味があったからだ。展開はうまくいっていたと思う。演じる必要はない、ただありのままを語ることで共感を得て、お金を借りることができることで、上手に女を手玉にとる貫也と里子が、徐々に飲み込まれて、元々の目的と刹那のよろこびが溶け合っていく様は丁寧に描かれていて、惹き込まれた。里子の手元から、貫也が離れていく(様に見える)ことへの不安や、自分のアイデンティティのおぼろげさへの不安など、よく伝わってきた。でも、それを有り体に回収していってしまう。安直に犯罪者として固定してしまう。つまらない。漁港の雑役なんて終着点ではないか!でも、人生はそこで終わらないでしょうよ。
http://yumeuru.asmik-ace.co.jp/

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