そして父になる 追記

 この映画にはカタルシスが無い。むしろ脚本が積極的に拒否している。安易なハッピーエンドを観客に与え、気持ちよく帰路に着くことを許さない。
 そもそも突きつけられたこの問題に答えなど無い。物語は執拗に良多の人間性において欠けた部分をあぶり出し、その原因の一つであろう彼の過去を示唆するけども、それは問題が解決されないことの理由ではない。
 それは彼に落ち度がないことを意味しない。彼は決定的に慶多を損なう発言をしたし、発言の元になるような考え方をしていたはずで、それはみどりになじられた通り。しかしながらこの問題が問題のまま解決されないことの理由ではない。
 この物語は良多の成長譚である。それは題にも示されている通り、彼は「父にな」ろうとしている。「父になる」は認めることだ。自分が不完全であり、自分はまだ成長しなければならないということを自覚し、息子その人や妻や隣人たちと共に成長しながら息子を育てていくと決意することだ。
http://soshitechichininaru.gaga.ne.jp/