ダラス・バイヤーズクラブ

 マシュー・マコノヒーがアカデミー主演男優賞を取った本作。有楽町で。
 木の柵の間から覗くロデオの映像と、セックスの吐息と、ここから始まる映画は、クズ野郎ロンの成長譚である。トレーラーハウスに住み、酒とドラッグに溺れ、売春婦とセックスを繰り返し、ゲイを見ては差別をする。そんな電気工のロン。圧倒的にテキサスの強者であったロンは、ふとしたことで入院し、そのときの血液検査でHIV陽性であることが判明し、一瞬で弱者の側へと転げ落ちる。ゲイ野郎と差別される立場となる。
 生きたいという思いからたぐり寄せた運命の綾で、彼が100%混じりっけなしに金儲けのために始めた、未承認エイズ治療薬の流通システムを通して、彼が他人に必要とされ、成長し、学者然とすら振る舞い、人格者となってしまうその滑稽さを描き出す。
 面白く見たのだけど、最も印象深いのは、レイヨンの死のシークエンス。あんなに簡潔で、かつ、あんなに深い悲しみを湛えた死の描写はないんじゃないだろうか。
 また、おそらく問題とするのは日本人だけだと思うので、野暮なことは言わずに斜めに見て笑ってしまえばいいと思うのだけど、未承認薬を求めて訪れた日本の描写が超いい加減。林原に来るのだけど、渋谷の映像じゃダメでしょ、岡山じゃないと。あと(おそらく)中国人の役者の日本語が・・・。
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