ラ・ラ・ランド

 デイミアン・チャゼル監督ラ・ラ・ランド。劇場で。
 これはよくできたエンターテインメント。素晴らしかった。
 冒頭の高速道路渋滞からの実に快楽的な長回しミュージカル、エマ・ストーンを始めとした女優たちのキュートさ(衣装も表情も)、随所で差し挟まれる気持ち良い音楽(菊池成孔にはコッテリ批判されているが)、使い古されているが共感させられる成功物語と悲恋と、いずれも娯楽作品としてよくできていて、非常に楽しめた。私には。おそらく、恵まれた立場に置かれた私には。
 このような「売れない駆け出し女優」や「売れないジャズピアニスト」が各々、「トップ女優」と「好きなジャズをプレイできるハコのオーナー」に成り上がる一方、好き合っていても別れて別々の道を歩むという悲恋物語は、かつてはおそらくアメリカンドリームの1つのバリエーションとして機能していたし、アメリカ国内でも信じられてきたし、“憧れの自由の国アメリカでの物語”として世界各地で遍く信じられてきたものと思う。少なくとも私はそう思ってきた。しかしながら、このような寓話にノレない国民が本国アメリカにおいても多数派であることが示された今、この物語は一昔前のものに落ちぶれ果て、説得力を失ったと言わざるを得ない。
 結局、内輪向けの作品じゃないか、そう思ってしまうのだ。この、少なくとも経済的には報われる物語は、ハリウッド内輪向けの物語であり、ルーザーたちには(アメリカ国内のルーザーたちにすら)届かないのではないか?そう疑問を持たずにはいられない。
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