Ascending Art Annual Vol.2 まつり、まつる

 市原えつこ、久保寛子、スクリプカリウ落合安奈、桝本佳子の4人展。青山にて。

 スクリプカリウ落合安奈の作品は写真もしくは撮影・映写に関わるもので、その中に時間や空間の概念を取り込んだものだったけれど、私の興味はあまりひかなかった。

 桝本佳子の作品は割とオーソドックスな形状の陶器と山川草木や動物が融合したようなかたちをした陶芸たちで、心惹かれるものではあったけども、考えさせられるものではなかった。(私にとって)

 久保寛子の作品は、5cm間隔で鉄筋が溶接された粗メッシュのようなもの(建築資材?)で面構成を行って、人間の顔や人間の足をかたどったもので、その大きさと大胆なデフォルメ感に心惹かれるものがあった。

 とはいえ、本展で最も素晴らしかったのは、市原えつこの作品だった。『デジタルシャーマン・プロジェクト』、『都市のナマハゲ』、3Dプリントでつくられた縄文土器に向かい、家庭用ロボットが祝詞(のりと)を読み上げる新作プロジェクトの3つが展示されていたが、都市のナマハゲはさほどピンと来ず、デジタルシャーマンもそれなりだったのだけど、新作プロジェクトはかなり思考をかき立てられた。

 シャーマンや祈祷の類は先入観として伝統的で、時代遅れのものという理解をしていたのだけど、それは私の偏見であると認識させられた。シャーマンや祈祷師は、別に翁や長老や老婆がしなくてもよいのである。シャーマンや祈祷に宿っている、人間が本質的に求めるもの(それは宗教に人間が求めるものと近いのだろう)を抽出して、それをテクノロジーで形を与えてやればよいのである。その具現化が上述のプロジェクト、そう私は理解した。

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