内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える

 水戸芸術館で催されている、内藤礼の個展。訪れる価値はある。が、豊島美術館の方がよりいい。
 「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに私も会場を歩いた。白い塗り壁、グレーに塗られた壁に反射して、部屋を明るくする日の光。人間の動きや息で揺れさざめく糸・ビーズ・風船・水面。これが後から考えると仕掛けであった。
 順路の後半になるにつれて窓がないゆえに隣の部屋から漏れる光で視界を確保する中、前半と同様の小品の展示が続く。1カ所だけ小さな小さな小窓が設けられていて、きらびやかな光が射し込んでいる。惹かれるものの、ベンチに座り側に待機しても、私には天啓は降りてこなかった。
 しかし、最後の部屋に向かう私を一筋の強烈な光が照らす。LEDチップを集積した発光体だろうか?と訝しんで近づく。それは小さな鏡だった。その光は最初の部屋の白壁に反射した、太陽の恵みであった。これまでの順路で周到に導かれた心持ちとこの部屋を回想する。全てが天から与えられたものであった。薄暗い部屋で発光体のように見えるその光も天から与えられたものであった。長い人生の中で慣れきってしまい、特に周囲が明るいと全くありがたみも感じない日の光は、こんなにも強烈なものなのだ。私達はこれを天から与えられ続けてきたのだ。ひととおり思いを巡らせていると、込み上げてくるものがあった。私達は、それそのものとして祝福されているのだ。そう感じた。
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 でも空間としての心地よさは、豊島美術館が上。川や海。流れる水(のようなもの)を我々はどうして偏愛してしまうのか。