彼女たちのまなざし

 北村匡平・児玉美月共著の彼女たちのまなざし。
 まさに学者が書いているのだなと体感させられる圧倒的な過去批評を受け止めつつの評で、知的に満たされる感がある。既に他者が評している内容については、適切に引用され、さも著者が気づいたことのようには書かれていないだろう信頼感がある。
 女性監督でくくった意味がいつ出てくるか楽しみにしながら面白く読んだ。結果としては問題意識のところなのかな。
 浜野佐知論はインパクト大。

御社の特許戦略がダメな理由

 長谷川曉司著、御社の特許戦略がダメな理由。
 この手の本は初めて読んだのだが、言いたいこと自体は誤っていないし、うなづける。が、本としては、戦略の例としての二次大戦のくだり、冗長だし参考文献が2冊しか明記されないのに40ページ弱を割くとは・・・どうなんでしょうか。何を言いたい本なのかぼやけたと思います。考察も浅いし…
 また、時代が古い気がします。2011年の本なら韓国のことは視野に入っていてほしいし、製造業であれば中国は当時の想定よりもかなり巨大な存在かつ知財は(自粛)な存在であるが、出身の会社からしてもドメスティックな議論で無法者を想定していないところが本書の射程を短くしていると思う。
 285ページの『特許というものは、発明の内容がよいものほど、出せば出すほど損をするものであるという、本書の主旨』というのは、よくわからない。それ趣旨じゃないでしょ?

ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展

 GYRE GALLERYにて。ワタリウムまで行くのが面倒くさくなってたまたま行ったのだけど、結構発見があった。
 地味にAKI INOMATAの10年前がツボに入って心を捉えて離さない。
gyre-omotesando.com
 

鈴木康広展 ただ今、発見しています。

 二子玉川で催されていたので行ってみた。
 まあ、結局見立ての目新しさとポップな形状色味が命だと思うんだけど、私には特に新鮮でなかった・・・
www.bunkamura.co.jp

神楽岡久美 菅実花「PROTOPIA」

 神楽岡久美と菅実花の二人展「PROTOPIA」、代々木にて。
 どちらかというと菅実花の新作を観に行ったのだが、こちらは物理の素養があると、まあそうだな・・・という印象で個人的には新たな視点のようなものは特に得られなかった感触。
 神楽岡久美の作品はおそらく全く初見ということはないと思うのだけど、正しさの限界と美しさの可能性的な最近の自分の問題意識とちょうど合っていたこともあり、新鮮に映り、作品を通していろいろと考えることができた。
www.yoyogibroadway.com

内藤礼 生まれておいで 生きておいで

 東京国立博物館にて。
 いわゆる美術館やギャラリーで内藤礼個展を実施するのとはことなる若干カオスとなっている旨の噂を目にしてちょっとビビっていたのだが、時間が空いたので飛び込んでみた。
 第一会場、第二会場、第三会場と分かれていて、第一会場・第二会場は内藤礼展のチケットを持っている人のみ、第三会場は常設展チケットでは入れる場所に展示されている。
 第一会場は薄暗い細長い展示エリアでまあ導入。第二会場は天井も高くある程度の広さに光と風が入り込む展示エリアになっていて、光と風が可視化されていて、普段存在しているけども気も留めないものを再発見することになる。
 第三会場は前述の通り常設展チケットでは入れる場所に展示されているため、半分くらい人のインスタレーションとなっていて、内藤礼展の存在を知らない人から断続的に『これは何ですか?』『これは内藤礼…』という常設展の入場者と係員のやりとりの繰り返しを見ることになる。第三会場の壁面にタイルが埋め込まれているのだけど、タイルがキラキラで、4面それぞれに設置されている鏡を探すのにそれ相応の苦労をし、タイルが、キラキラなことを再発見することになった。ここは風がないのは残念だけど、展示物が少なく、人が殺到しないうえに、ベンチがあるので、ここがある意味一番落ち着いて浸れた。
 思い立って午前中に鑑賞したので避けられたようだが、帰りには行列ができ入場制限がかかりかなり待たされそうだったので、ラッキーであった。
www.tnm.jp

くれなずめ

 松居大悟監督、くれなずめ。
 アフター6ジャンクション2021年5/28回でリスナーから指摘される内容は全く持って否定できない。その通りだと思う。

 全体に流れる品のないホモソ感に乗れませんでした
 open.spotify.com

 まあ、昔なのでという免罪はさせていただくが、私は完全に品のないホモソ空気漂う高校で、そのような仲間と、そのような時間を過ごしたし、その時間は私にとっては大事な時間だったと胸を張って言える。世の中には「正しい」⇔「正しくない」以外の軸が存在し、上述の通り正しくないのだが大事なものがあるのだ。
 just for meな作品だった。

新工芸舎新作予約販売会2024夏

 東銀座のSHUTLにて。松竹がやっているのかな?初めて中銀カプセルタワービルのカプセルに入った。ちゃんと調べてなかったのでうれしい誤算。
 3Dプリンタの積層痕など、一般にはFDM3Dプリンタの原理的な欠点とされるテクスチャをむしろ味として利用していくような商品を取り揃えていて、3Dプリンタで遊んでいる身/旧来型の製造業で働く身としては、思想的に共鳴するところがあるし、今後もチェックしていきたいと思った。
 ペンとかカッコイイし欲しいなと思ったが、結構いいお値段するので、、、見送ってしまった。
shutl.shochiku.co.jp