シン・ゴジラ

 庵野・樋口のシン・ゴジラ。映画館で。
 掛け値なしに名作。絶対に観るべき。なんなら何度か映画館に足を運んでもいいとすら思っている。劇中、中盤から涙なしには観られなかった。それは、スクリーンに映し出されたものが、私に地震を、津波を、原発の水素爆発を、思い出させたから。そして、こんなに素晴らしい映画を、しかも邦画を、観ることができるとは思っていなかった事前の予想をはるかに上回ってくれたから。そして、監督はじめスタッフ、長谷川博己はじめ出演陣、すべての苦労が報われた瞬間を見たから。
 言わずと知れたゴジラ。その現代版。もしくは震災後版。“想定外”の出来事が起こった時に、日本がどう対処するのかという危機管理のケーススタディになりうる、右にも左にも強烈に皮肉を浴びせる物語を、いい塩梅のグロさで造形されたゴジラと若き政治家との戦いに託して描く。
www.shin-godzilla.jp

地獄のガールフレンド

 鳥飼茜の地獄のガールフレンド。Kindleにて。
 女性性を避けずに扱っているし、女性の弱さこそが強さ的なしたたかさも隠すことなく描かれる。先生の白い嘘がいたたまれないので、こっちの方がずっとこころ暖まるわ。
東京タラレバ娘とかこれとか、女性作家の漫画って教育効果高いよね。

地獄のガールフレンド(1) (FEEL COMICS swing)

地獄のガールフレンド(1) (FEEL COMICS swing)

地獄のガールフレンド 2 (フィールコミックスFCswing)

地獄のガールフレンド 2 (フィールコミックスFCswing)

 よくわかんないんだけど、不倫に身を捧げる女の人ってそんなに多いの?周りからも聞くけど、私の身の回りだけでなかったのかしら。

養老天命反転地

 養老天命反転地へ行った。この記録↓によると11年ぶりに訪れたようだ。
creep.hatenadiary.jp
死なないためのテーマパークなわけですが、一部は徐々に朽ちて行っているように見えて、諸行無常の思いであった。時間をたっぷりかけて、何周もし、各所くまなく回ってみたのだけど、それでも時間はわずか1時間しかかかっておらず、空間だけでなく時間もゆがめられたようなそんな思いでした。
養老天命反転地 | 施設案内・マップ | 養老公園

しあわせのパン

 三島由紀子監督、大泉洋原田知世主演のしあわせのパン、録画を自宅で。
 小さな物語、何気ない日常の素晴らしさを訴えてくる内容で、普段から筆者の考えていることと親和性が極めて高いはずなのだけど、あまりハマらず。
 何気ない日常を演出したいのに、“有珠のパンが美味しいカフェ”という非日常的な舞台がハマらなかったのだろうか?寓話なんだから別によい気もするのでただの好みの問題かもしれない。
 森カンナが原っぱを転がるシーン、なぜ寄った画のパンで表現したのか理解に苦しんだのだけど、今思ってみれば、平岡祐太の視点だとあんな感じだったのかも。

六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声

 森美術館六本木クロッシング2016展。
 藤井光というアーティストの作品が印象に残った。戦時中の日本兵の残虐行為のビデオを韓国人学生に観せ、口伝させたり演劇(学芸会レベル)で再現させたりするという試み。何にも面白くないはずなのに、韓国人学生たちがはにかみの笑顔を見せたりする。
 意図通りなのか、図らずもなのかわからないが、日本人と韓国人の類似性が浮かび上がっているように感じた。

ブラーバ

 iRobotのブラーバ(ルンバは掃き掃除、ブラーバは拭き掃除)を買ってみた。
 掃除が大嫌いなのだが、毎日のようにブラーバくんに拭き掃除をしてもらうようになった。もともと床がきれいでないことは重々承知しておったのですが、実際にクイックルワイパーをセットして掃除させてみて、現実としての拭き取られたほこりの分厚さを目の当たりにして、買ってよかったと思ったのでした。
 web上ではクイックルワイパー立体吸着ドライシートが定番のようですが、ユニチャームのウェーブ フロア用ドライシートを圧倒的におすすめします。より大きめの塊もつかめるので。

クイックルワイパー フロア用掃除道具 ドライシート 40枚

クイックルワイパー フロア用掃除道具 ドライシート 40枚

ウェーブ フロア用ドライシート 立体Wキャッチ 40枚入

ウェーブ フロア用ドライシート 立体Wキャッチ 40枚入

ディストラクション・ベイビーズ

 真利子哲也監督のディストラクション・ベイビーズ。チケット最後の1枚で滑り込んで最前席で。
 ケンカが生きる目的そのものであり、殴られて痛みを感じることが生きることそのものであり、ケンカしがいのある人間を見つけるために街をほっつき歩き、ケンカをふっかけ、勝つまで執拗に追いかける、泰良。
 気が小さく、一人では何もできないものの、虎の威を借りつつ何かでかいことをやってやりたい、具体的には自分よりも弱いものを痛めつけ、優越感を満たしたい、裕也。
 どこか満たされない気持ちを抱えつつも、自己中心的に強かに生きる那奈
 そして泰良の弟、将太。
 柳楽優弥演じる主人公泰良には全く共感できなかった。おそらく映画を劇場に観に来るような人間には、共感できるところなど、ない。上に記したように、彼の狂気には論理がない。だから避けようがない。まるで天災のようなものだ。怖い。ある程度年齢を重ねた人間であれば、ルールや論理が通用しない人間が存在することを知っているだろう。彼だ。悪魔だ。純粋な狂気。
 印象的なシーンがある。殴られ痛めつけられるときに、彼は無邪気に笑顔を見せる。心からうれしいのだ。ありきたりな言葉だが、痛みを感じることで自分の生を実感している、そのものの表情。ケンカをふっかけられる人間を含め、彼以外の全ての人間とは価値観が違う。彼以外は皆、痛いのは嫌だから。彼以外は皆、殴られ痛めつけられると顔をしかめるのだから。
 もう一つ印象的なシーンがある、小松菜奈演じる那奈が反射的・衝動的に人を殺めた直後に彼女に問いかけた“どやった?”極めて無邪気に、“気持ちよかったやろ?”と聞きたいのだ。彼は、他人も皆、暴力=快楽だと思っているのだ。

 他、菅田将暉演じる裕也の卑劣で人間が小さい様、小松菜奈演じる那奈のやるときはやってしまう強かさ、ちょい役で出てくる池松壮亮演じるキャバクラ店長の切れ味鋭い感じ、いずれも生々しく、松山に近づきたくない思い。

 三津浜の波に揺られ、不安定な画面が印象的な冒頭と対照的に、終盤の海は静かで、夕暮れだった。
 しかしながら、この狂気を追い続けるこの物語は最後においても、閉じていない。狂気は殲滅されない。この世の中に在り続ける。

 監督の意図通り、不快な映画だった。
distraction-babies.com

ブンミおじさんの森

 アピチャッポン・ウィーラセタクン監督のブンミおじさんの森。DVDで。
 タイ北東部、ラオスと遠くない地域で農場主をやっているブンミは透析を続ける生活で、自分に死期が近づいていることを自覚している。
 ある夜の晩餐、妻の妹とその息子(ブンミの甥に当たる)と食事が終わった頃に、妻の幽霊と行方不明になっていた息子が森の精霊へと変わり果てた姿で戻ってくる。
 次の夜、妻に導かれ、一行は森の奥の奥、そこにある洞窟の中に入り込んでいく。そんな映画。
 セリフは少なく、1カットは長く、観客が注意を引かれるイベントごとは少なく、ゆったりと映画は進む。仏教的なものとアニミズム的なものが色濃く反映された内容で、ティム・バートン含め、カンヌでどうやって評価したのかにも興味が湧く。
 おそらく最終シークエンスの、義妹と甥の幽体離脱については議論がなされたのだろう。背景知識不足ゆえ正直よくわからない。
 黒すなわち闇が画面のかなり多くを支配していて、映画とテレビドラマとの違いの一つは、闇を表現の手段として使えることだなと再確認した。